大上博基先生

農業をするために、水を使い治め、土を診て築くために、人々は自然に手を加えてきました。しかし、他の産業と異なるのは、人々が手を加えることで2次的自然が出来上がってきたということです。
きれいに整備された棚田などの農地や用水路は、その例ですね。
農業は、本来、環境を守る産業、いや生業なのです。
これと同時に、地域の人々の生活環境を整えて農村をデザインするのが、私たちの仕事です。
2次的自然、生態系の豊かな農村は、私たちの心の故郷であり、私たちがさいごに帰るべきところではないでしょうか。


■どのような研究をしているのですか

農業気象と農業用水について研究しています。

コースのキーワードとして、土・水・環境と言いましたが、これに「大気」を加え、土・水・大気・環境について研究していると考えてください。

農業気象は、農地や森林の植物を中心とする気象現象を研究する分野です。私は、二酸化炭素やオゾンの濃度上昇あるいは地球温暖化に対して、植物が生育と水利用をどのように変化させるかについて、フィールドでの気象観測とコンピュータを用いたモデル化によって研究しています。

農業用水は、乾燥地だけでなく当然日本のような湿潤地でもインドネシアのような熱帯地域でも重要です。私は、中央アジアや中国の乾燥地での水利用(灌漑農業)と砂漠化などの環境問題の関係や、インドネシアでの水利用に見られる技術的なしくみと文化的なしくみについて、現地での観測や聞き取り調査などによって研究しています。

このように、科学的で工学的な研究も行っていますが、最近は「水を使う」ということに本来含まれる社会的な側面も取り入れ、専門の幅を広げながら研究を行っています。

 

■どんな学生さんに選択してほしいですか?

このようなコースの仕事に興味があれば、多くの学生さんに選択してほしいと思います。

「このコースは工学なので物理が必要でしょうかという質問をよく受けます。

このコースの仕事には、物理学的な知識が必要な場面もありますが、それだけでなく化学的、生物学的、地学的な知識も当然、同じように必要な場面がたくさん出てきます。
授業や卒論研究でそのような場面になれば、不得意だったとしても学習せざるを得なくなったり、学習しようという意欲が起こってくるものです。
皆さんの先輩方も、そのようにして卒業して社会で活躍されています。

面白そうだなと思ったら、間違いないのではないでしょうか。