■教授はどのような研究をしているのですか?
この地球上の様々な生態系のなかで浅海域生態系は最も生物多様性や生産量が高い生態系の一つであり、また、様々な人間活動が盛んな陸域に隣接します。特に、日本を含む東北アジアは、世界的にみても経済活動が最も盛んな地域の一つです。そのため、我々は豊かな生活を送ることができますが、その反面、様々な人間活動の影響が最も現れる可能性もあります。
そのために浅海域生態系における生物群集の多様性や生産量等の解析、人工化学物質の排出や気候変動等の人為的活動が及ぼす影響評価を行うことは、今後の浅海域生態系の生態系保全をすすめるうえで、極めて重要な研究分野であると考えています。
この数年、世界的な規模でサンゴの白化が発生しています。気候変動がその主な要因として考えられていますが、海洋酸性化や隣接する陸域からの富栄養化や汚染などもその要因として考えています。そこで、この数年、主に、化学物質等が造礁性のサンゴへ及ぼす影響評価などの研究を行っています。
■そのような研究を行う上で苦労したところ、難しかったところはどんなところでしょうか?また、学生さんとの想い出等教えてください。
そのような目的のため、日本南岸から熱帯域の沿岸域生態系で主要な生物であるサンゴを使った毒性実験を行っています。ここ、松山の農学部の研究室でサンゴを飼育し、様々な研究を行っています。沖縄から輸送してきたサンゴを用いて飼育実験のシステムを立ち上げつつありますが、輸送方法の確立や、サンゴ飼育における水温や光条件などの色々と細かい条件設定に苦労しました。新しい実験システムの場合、マニュアルがあるわけではありませんのので、どのような条件がよいのか、少しずつ変化させたりして、実験によい条件を探っていきます。このような作業には、思ってる以上に時間が掛かったりします。また、時には、ちょっとした工夫でうまくいったりします。
そういうのを研究室の学生と一緒に考えながら、こういう工夫すればいいんじゃないかと考えていくのは、最初は大変なんです。だけど、それは上手くいくといい実験結果をえることができます。
生態系保全の研究室を卒業したからといって、環境関係のNGOだけに就職するだけじゃなく、本研究室の卒業生は、分析会社や食品会社など、様々な一般企業に幅広く就職しています。
研究室の学生もそういうことを経験しておくと、社会に出てからも役にたつでしょう。実験条件の設定などを一緒に頑張った学生が社会に出て、そういう会社で活躍していたり、責任ある仕事を任されたという報告があったりすると、色々頑張って実験してよかったなと思います。
■先生はどのような実験、実習を担当されていますか?
私の場合は、このコースの授業では、環境保全学実験IIというのを担当してます。実験と言うよりは、どちらかというと実際にフィールドにでて実習形式で実験を行います。具体的には、海岸のカニや貝類などの生物の同定や多様性調査や、実際に船に乗船し、海洋観測をおこなったり、採集したプランンクトンの同定などを実習形式で行っています。
研究室における実験では、先ほどの話でも言ったように、実験室内でサンゴを使った毒性実験ができる飼育系を構築中です。本研究室の飼育系のシステムは、世界的に見ても非常に小規模なものであり、この松山でも、サンゴを使用した毒性実験や遺伝子の発現解析ができるようになりつつあります。また琉球大学等との共同研究として、野外のサンゴ礁のモニタリング調査、特にサンゴ白化過程の解明等の研究も実施しています。
■高校生の方たちへ一言お願いします。
環境問題を研究しているというと、先にも話したことですが、一般的にはNGOなどが就職先だと思われていますが、今では、いろんな企業で環境問題を勉強してきた人が必要になってきます。
この冬も暖かい日が続いています。北極域の氷が少なくなっているというニュースもありました。今後は気候変動などにより、環境が大きく変わる時代が予想されています。今後、益々、環境を勉強し、環境問題に対する知識が豊富で、その対処を考えていける人材が、幅広い業種の企業で必要になってくるでしょう。
■在学生の方たちへ一言お願いします。
この数年、世界的な今後、気候変動等の大きな環境変動がまさにおこりつつあるという状況を迎えています。その中で様々な、環境問題を勉強し、その対処を考えていくことは、これから、ますます重要になっていくことになるでしょう。