高橋真先生

■コースについてお話ください

近年の急速な社会の工業化や資源需要の増大は、環境汚染や天然資源の劣化を引き起こし、地球規模での自然環境の悪化や生態系の破壊をまねいています。私たち人類も含め、地球上の全ての生命と生態系の存続は、今後私たちが自然環境の物質循環と調和した持続可能な社会を構築できるかどうかにかかかっています。
環境保全学コースは、将来の環境悪化を防ぐため、また悪化した環境を改善するために自然環境や生物・生態系の保全に積極的に貢献出来る人材の育成ということをポリシーに掲げて教育・研究を行っているコースになります。

■環境保全学について

まずいえるのは、環境保全学は非常に広い分野を扱う学問体系だということですね。
例えば環境汚染を解明するという時も、環境中の汚染物質のモニタリングには分析化学が必要ですし、その動態を考えるときには大気や河川、海洋、土壌に関する化学や生物学、物理学が必要です。環境ホルモンなどの有害物質による生物への影響を考えるときも、大きな目でみれば生態系全体にどういう影響が現れているのか、生態学的な視点・理解が必要です。また、ミクロの目で見て、生物個体、あるいは臓器や組織、細胞や分子レベルでどういう影響や作用があるのか、これを解明するとなると、生化学や毒性学、分子生物学や微生物学など幅広い知識や経験が必要になってきます。資源問題に関しても、バイオマスであれば生物学が必要ですし、資源の加工や利用などには化学や工学的な技術・知識が必要でしょう。資源枯渇と地球温暖化の問題を深く理解するには、地球科学の素養・センスも必要となります。

これだけでも十分に広い学問領域だということがわかりますね。
さらに環境保全学は、環境が悪化し、人間含む生物や生態系が影響を受けた時にそれをどう解決、改善すればいいのか、工学的な環境浄化対策まで含む領域を扱います。

このように、自然科学全般、場合によっては社会科学の一部まで、ミクロからマクロまで非常に幅の広いものを環境保全学の分野では対象にしています。

正直、大学の4年間だけで、こうした幅広い分野の知識やスキルを完全にマスターし、使いこなせるようなるのは、まず不可能ともいえます。しかし、逆にいえば、必ず自分が興味の持てる分野や対象が見つかるコース・学問体系であるとも思います。そして、学生さんにはまずはいずれかの分野のスペシャリストになることを目指してほしいですね。同時に、「環境保全」に係る幅広い素養・視野・センスを身につけることで、将来の持続可能な社会を作るための‘知的基盤’を得て欲しいと思っています。